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たぬきの本棚
姫さま狸の恋算用

帰ってきたTANUKI
C.W. ニコル 著/ 森 洋子 訳
実業之日本社,1995

ちょっと今では古くさく感じる、表紙のデザインに化かされてはいけない。

和訳のためか、残念な感じのタイトルに化かされてもならない。

中高生でも読める平易な文章にも化かされてはいけない。

「信仰の森でのゴルフ場開発に、たぬきと作者の分身らしき異国人が変化自在立ち向かう」という、ジブリライクなあらすじにも化かされてはいけない。

狸と人的環境の問題、J・ムーアさんが指摘されたような「たぬき」のアニミズム的普遍性、中村禎里先生の「狸とその世界」で示されたような縄文以前よりつづく「たぬき」イメージの変遷迄をすべからく貫いた一冊だと、誰がこれを読まずして窺い知ることができようか。

1995年出版という本作が、今の自分にとって未だ新しい。テレビなどで見たことのあるナチュラリストのC・W・ニコルさんが、これまでのたぬき好きとは・・・いや、この化かし加減は偶然の産物か。彼自身たぬきでなかろうかと訝しんでしまう、そんな一冊。(いわき)

老人力全一冊
赤瀬川原平 著
ちくま文庫,2001

物忘れ、繰り言、ぼけ・・・故・赤瀬川原平さんがここに再発見した「老人力」とは、ひょっとして「たぬき力」のことではないか?白黒つけず、言い切らず、なんだかもちゃもちゃと、うやむやのままにしておく・・・それは意識的か無意識かを問わず、人の世の接触面をゆるゆると穏やかにつなぎあわせるだろう。夜の闇がネオンでなくて今ではLTE灯のもとにさらされ、かつては「たぬきのやつが・・・」の一言でそれ以上の追求を避けられた人間のこころの闇、その“不思議”が行き場を失いつつある現代に。老人力、すなわち「たぬき力」の復権が必要である!・・・なんつって。(いわき)

姫さま狸の恋算用

2015年3月21日(土・祝)〜5月31日(日)

広島市現代美術館「赤瀬川原平の芸術原論展 1960年代から現在まで」

http://www.hiroshima-moca.jp/exhibition/akasegawa/

姫さま狸の恋算用

『黒部の山賊 ―アルプスの怪』

伊藤正一  著

(ブルーガイドセンター. 1994)

 

山小屋の古老の昔話を聞いていると、登場人物たちがめくるめく山小屋を訪ねてくるような本。彼の古き良き友人、狸や熊や山賊たちと心を通わせる。昔話の発生源のような、人を含む山の動物たちの不可思議な生態。狸が音真似をする動物だとは面白い。さて、山賊とは、われわれ世間が山奥へと追いやったものなのか。彼らのことが狸に思えてならない。(林)

『心狸学・社怪学』
筒井康隆 著
(角川文庫. 1986)

自分の本棚から「狸の本ってないかな?」と探していて発見したのがこれ。1969年12月発表。さすがに時代は感じますが、団地・持家の対立と戦争を描く『優越感』、安田騒動をモチーフにした近未来小説『原始共産制』、2000人斬りに挑戦する男の末路を描く『マス・コミュニケーション』など、人間の心の「毒」を極端に拡大化して、その「化けの皮」を剥がしたり、また社会の「闇」を大袈裟に矮小化して、さらに怪しく化かしていくさまは実に痛快。狸の話は一切でてきませんが、超一流の狸小説といえます。筒井康隆が、いまのようなSFの大御所に化ける以前の才気奔った新進作家時代の名短編集としてオススメです。(陸奥)

姫さま狸の恋算用
有頂天家族

『有頂天家族』
森見登美彦 著
(幻冬舎. 2007)

森見登美彦×タヌキ×もちろん舞台は京都!!(土地勘のある方はさらにおもしろく読めること間違いナシ。)いやはや、流石の森見節。まるで化かされたようにあっという間に読ませる400ページ。軽やかで爽やか、そして忘れず心の琴線もふるわせる親子愛、兄弟愛、師弟愛、愛、愛のものがたりは、アニメやマンガにも展開。たぬきシリーズ3部作として現在、第2弾が雑誌「パピルス」に連載中。まだまだ末永く僕たちを化かして楽しませてくれそうな痛快たぬきノベル。(いわき)

『姫さま狸の恋算用1 』
水樹マユ 作
(双葉社. 2014)

徳島出身の漫画家さんが地元・徳島を舞台に描くオタヌキラブコメ。徳島を代表する「金長たぬき」をご先祖様にもつ大和陸(主人公)は高校2年生。陸が密かに想っている幼なじみの近衛百香と一緒に、京都の造形大学への進学を希望していた矢先、突然親から許嫁の話をされる。お相手の女の子は人間に化ける、とってもかわいい雌狸のミヨちゃん。ミヨちゃんの出現によって、陸と百香との三角関係が始まる。今後の展開も目が離せない、青春お狸ファンタジー!かなりのオススメです!(日根野)

姫さま狸の恋算用
姫さま狸の恋算用

『生きるんだポンちゃん』

中村ただし 著

(旺文社. 1980)

 

私が「けもり」に関わるようになり、狸を意識し始めた頃、真っ先に浮かんだ本がこの本でした。小学生の頃に読んで今は手元に無いですが表紙のデザイン、ポンちゃんの顔写真、傷口の生々しい写真、傷の癒えたポンちゃんが山に帰るシーンは今でも鮮明に覚えています。車に跳ねられたポンちゃんを発見したトラック運転手とお医者さんが懸命に助けようとするお話ですが、出てくる人びとの気持ちがとても伝わるお話です。ぜひ、小さなお子様に読んで欲しい。大人になっても心に残る良いお話です。自分がそうでしたから……。(加藤)

『狸とその世界』
中村禎里 著
(朝日新聞社. 1990)

本物のタヌキは酒好きでもないし金玉袋も大きく広がったりはしない。ましてや変身するなどこの科学信仰の時代にあっては冗談にもならない。どうやら生物としてのタヌキとは別に、僕たち日本人のDNAには「狸」というイメージが刻み込まれているようだ。かつて地のカミが仏教伝来とともに山境に追いやられ異界の「狸」となり、そこを住処としたり通過する者たちの象徴となっていった……それは里人からの異人(マレビト)へのまなざしに他ならない。その意味で「狸」たちは現代にもかたちを代え生きているのではないか。“アーティスト”と呼ばれる人たちもまた現代の「狸」かもしれない。(いわき)

姫さま狸の恋算用
姫さま狸の恋算用

『妖怪辞典』
村上健司 編
(毎日新聞社. 2000)

春にちょっと仕事にまいってしまい寝込んだ布団の中で、気付けばこの図鑑の中から抜粋して“全国狐狸図鑑”に再編集している自分がいた……きっとあのときから今も、僕は狸に化かされ続けているのだろうナ。夜道に無数の蚊帳をつり下げて人を化かすユニークな狸。人に首吊りさせるおっかない狸。ただ走り回るだけの狸。(岡山の「魔法様」の物語は必見。泣けます。)全国にはまだまだ沢山の狸たちが僕らを待ってくれている?(いわき)

『蜜月』第4号(2009年夏、秋)
「いたずら好きのタヌキと暮らす―徳島県 東祖谷落合の伝承を訪ねて・続編」

タヌキに化かされたことがある人が、現代にもいたなんて!?徳島県は東祖谷にある落合という集落では、村人全員がタヌキに化かされた経験があるそうな。ひょんなことからタヌキ伝説に魅せられた女子たちは、2005年から村に通い詰め、村人たちの体験談をまとめあげる。平家の落人伝説が残り、木地師が活躍したというほどの山深い村。そんな場所では、タヌキに化かされた話も、話のタネのひとつ。村人たちの暮らしに彩りを添えただろう。村の暮らしにも興味を持って、どんどん村人たちと仲良くなっていく作り手たちの姿は、話題をふりまいたタヌキの姿とどこかだぶって見える。好奇心旺盛な作り手たちの姿にこちらまで楽しくなってくる手づくり雑誌だ。(太田)

「蜜月」ご購入はこちらへ mitugetu@hotmail.co.jp

姫さま狸の恋算用
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